胡蝶蘭講座3



前項では、着生ランが樹の幹や岩の上に生えているということに触れました。では、いったいどのようにして、そのような所へ種子をとばし、分布域を広げることができるのでしょうか。ランが進化の過程で身につけた、ふしぎな生態に迫ってみましょう。 

 ランの花が咲くと、こん虫が訪れ、花粉を運んで受粉します。やがて花は落ち、花のつけねにある子房がふくらみ、果実となって、中に種子ができます。 

最も小さな種子

着生ランの一種、カトレヤでは大きさがチャボの卵ほどの果実ができ、その中には何と百万粒以上もの種子が入っています。その大きさは〇・五~〇・八ミリほどで、粉のような極めて小さな種子です。そのため、わずかな風が吹いただけで、遠くへ飛び、高い樹の上にまで散布されます。ランの種子は、芽を出すために必要な養分を捨てることにより、軽くなっています。
新たな樹や岩の上へ種子を運ぶことができる秘密は、種子の軽さにあるのです。

ランを育てるカビ

ほかの植物の種子と比較すると、たとえばカキの種子の中には、胚乳(はいにゅう)という発芽するときに必要な栄養分が含まれていて、すでに子葉(しよう/葉の原型)もつくられています。ところが、ランの種子には胚乳がなく、構造もきわめて単純で、運良く樹や岩の上に付着した種子も、自力で発芽することが出来ません。
では、いったいどうやって発芽するのでしょうか。ランの種子の中にラン菌(きん)と呼ばれるカビが入り、ランはそのカビを消化して養分にしながら発芽しているのです。ある程度生長し、体内に葉緑体(ようりょくたい)が形成されると、光合成(こうごうせい)を始め、自分で養分をつくって自活できるようになります。しかし、大きくなっても根の先に細胞内に菌を住まわせ、スポンジ状の膜で根を保護して、互いに助け合う共生(きょうせい)生活を送ります。したがって、着生ランは樹や岩の上のような厳しい環境でも生育できるのです。

百万分の一の確率

自然界では、うまくラン菌とめぐり会えた種子だけが発芽できます。生き延びて開花することができるのは、百万粒の種子から、たったの一~二株と言われています。

※そんな稀少なランですが、人工的に増殖するための努力が続けられた結果、今日では人工培養で大量に苗を生産することが可能となりました。蘭ミュージアムでもバイオ研究を行っていく計画です(バイオ技術は、特集を組む予定です)。