胡蝶蘭講座8



春になると、高森でも人家近くの林床で、シュンランがひっそりと咲いています。実はシュンランは園芸店でも大量に売られているシンビジウムの仲間です。

 シンビジウムの仲間は、戦後いち早くバイオ技術を取り入れた大量生産が行われたことで、私たちにもなじみが深いランの一つになっています。今回はシンビジウムに焦点をあててみたいと思います。
シンビジウムという名前はギリシャ語の「舟形の」という意味で、唇弁の凹状に湾曲したかたちに因んだものです。

シンビジウムの原産地

シンビジウムはヒマラヤから中国を経て、オーストラリア北部まで広範囲に分布し、約五十種が知られています。熱帯アジアではとりわけ多くの種類が分布しています。これらの地域は貿易風や偏西風の影響で、湿度が高く、霧や年間降水量が多い反面、雨が殆ど降らない乾季もあります。
熱帯産の多くの種類は樹の幹にくっついて着生生活をしていますが、シュンランやカンランのように、温帯産のシンビジウムは地面に直接生える地生種です。

シンビジウム栽培の歴史

中国ではラン栽培の歴史が古く、千年以上も前から栽培されています。日本でも古くからシュンランなどを豪華な鉢へ植えて、室内で楽しんできました。これら東洋ランと呼ばれる東アジア産のランでは、花は小さくとも、花変わりや斑入りを収集したり、香りを楽しむといった、東洋独特の園芸が発展を遂げてきました。
一方ヨーロッパでは、アジアに植民地を広げたため、熱帯アジア原産の派手な花を咲かせるシンビジウムが導入され、貴族の間での収集熱が高まりました。特に、アレキサンドリ・ウエストンバートという品種は、1922年に英国王立園芸協会より、最も名誉ある最高賞を与えられ、多くの交配親として用いられました。
しかし、ウイルス病という不治の病に冒され、多くの個体が失われてしまいました。それを取り除くため、1960年にメリクロンというバイオ技術を用いたところ、健全な苗の大量生産ができることがわかり、その技術が農業生産に応用されるようになりました。
もともとは熱帯アジア産のランでも、ヨーロッパを経由して日本へもたらされたため、洋ラン(西洋ラン)と呼んで、東洋ランと区別されています。
また、キンリョウヘンという中国産の小型のシンビジウムを片親として交配し、日本の住宅事情に合った小・中型のシンビジウムも開発され、一気に普及しました。